冠婚葬祭を執り行なう日を決めるときには、お日柄を調べて、行事にあった日を選ぶのが一般的です。今回は、お日柄を表す基準のひとつ、十二直を紹介します。

十二直とは?
冠婚葬祭を執り行なう日を決めるときには、お日柄(おひがら)を調べて、行事にあった日を選ぶのが一般的です。日柄を表す基準には、大安や仏滅などの六曜(ろくよう)のほか、十二直(じゅうにちょく)、二十八宿(にじゅうはっしゅく)などがあります。
十二直とは暦(こよみ)に記載されるさまざまな注記のひとつで、建、除、満、平、定、執、破、危、成、納、開、閉の漢字12字で表されています(図表参照)。これらは日々の吉凶を見るもので、中国より伝えられたと言われ、奈良の正倉院にある日本最古の暦にも記載されています。江戸時代には、かな暦に広く用いられ、日々の吉凶を見るうえで最も重視されました。「直」には「当たる」という意味があり、よく当たる暦注だと信じられていたようです。なお、十二直は暦の中段に記載されているため、中段、中段十二直と呼ばれることもあります。
★十二直
十二直 | 読み | 吉凶 | 解説 | ||
意味 | 吉 | 凶 | |||
建 | たつ | 中吉 | 物事を始めるのに良い日 | 柱立て、棟上げ、元服、新事業開始、婚礼、旅行、金銭の収納など。 | 屋敷内の土動かし、物出し、舟乗り始め。 |
除 | のぞく | 小吉 | 悪いことを除ける日 | 種まき、医者にかかり薬を飲むこと、井戸掘り。 | 婚礼、土動かし。 |
満 | みつ | 大吉 | 万物が満ち溢れるが、何事も控えめにする日 | 移転、旅行、婚礼、元服、普請など。 | なし |
平 | たいら | 大吉 | 万事を公平に分け与える日 | 地固め、柱立て、種まき、移転、婚礼、祝い事など。婚礼は大吉。 | なし |
定 | さだん | 小吉 | 物事が定まる日 | 種まき、移転、祝い事、売買ことなど。婚礼は大吉。 | 普請、造作、植木の手入れなど。 |
執 | とる | 小吉 | 万物を裁決する日 | 婚礼、種まき、井戸掘り、造作など。 | 金銭収納、財産整理など。 |
破 | やぶる | 大凶 | 戦えば必ず傷つく日 | 訴訟、交渉事。 | 神仏祭祀、普請、造作、移転、祝い事など。婚礼は大凶。 |
危 | あやぶ | 大凶 | 危険がともなう日 | 酒造り。 | 酒造り以外すべて。 |
成 | なる | 小吉 | 物事が成功する日 | 見合い、結納、婚礼、新規事業開始、開店、種まき、普請、造作、移転など。結納は大吉。 | 訴訟、交渉事。 |
納 | おさん | 小吉 | 万物を取り収める日 | 作物の取り入れ、物品買い付け、買い入れ、新築など。 | 婚礼、見合いなど。 |
開 | ひらく | 小吉 | 運が開ける日 | 井戸掘り、造作、婚礼、元服など。 | 葬式などの不浄事。 |
閉 | とづ | 凶 | 万事に悪い日 | 金銭収納、墓造りなど。 | 造作、旅行、冠婚葬祭など。 |
十二直の由来
十二支の由来は、北斗七星にあります。古来、中国では、一定の位置で動かない北極星を中心に1日1回転する北斗七星をもとに暦を作成していました。北斗七星のひしゃくの部分が夕方どの方角を向いているかを、その方位の十二支に当てはめて各月の名を決め、暦に記し、吉凶判断の基としていました。
12月22日ごろ(旧暦の11月)の冬至には、北斗七星のひしゃくの部分が真北(十二支の「子」の方角)を指します。そこで、この時を建子(けんし)の月と名付け、旧暦十二月は丑、正月は寅というように各月を名付けました。その節月と同じ十二支を持つ最初の日を「建」とし、以後順に、除、満と配したのが十二直です。
十二直と葬儀
十二直では、危、破、納、開、閉の日はお日柄として葬儀にはよくない日とされています。もっとも、最近はお日柄を気にせずに葬儀、火葬、納骨を行うことが多くなりました。ただ、葬儀に参列する人によっては、吉凶を気にされる方もいらっしゃいます。どうしてもお日柄の悪い日に葬儀、火葬、埋葬を行う際には、その旨をあらかじめ申し伝えておくなど、気を配っておくと、後々のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
なお、十二直は昭和初期の頃までは重視されていましたが、最近は六曜や九星のほうが重視され、以前ほどは使われなくなっていると言われています。