人は誰しも、自分らしい生き方にこだわりがあるものです。それと同じで、自分にもしものときの葬儀・葬礼のあり方についても「こうしてほしい」という希望があるものです。

61-1 遺言と葬儀
人は誰しも、自分らしい生き方にこだわりがあるものです。それと同じで、自分にもしものときの葬儀・葬礼のあり方についても「こうしてほしい」という希望があるものです。
ところで、自分が亡くなった後の始末について、生前に遺言を書いておく人が増えてきました。遺言にはいくつかの種類がありますが、その中でも、遺言書の全文、日付(年月日)、氏名(同一性が明らかであれば通称名も可)を自署して押印した「自筆証書遺言」が一般的です。(コラム第13回/遺言参照)
遺言には、財産分けなどの相続に関することや婚姻届を出していない夫婦の間に生まれた子どもを認知するなどの身分に関することのほか、「付言事項」といって、残された家族に想いを残すための事柄を記すことができます。付言事項の内容には法的な効力は生じませんが、自分の死後に残された家族に伝えることができるメッセージとして、遺言書に書く人が増えています。
「葬式はできるだけ格安なプランを希望します」
「通夜、告別式には、家族、親族のほか、勤務先の○○さん、お世話になった○○さん以外は呼ばないでください」
「お墓は不要です。海に散骨してください」
このような希望を付言事項として遺言で残しておけば、家族にその想いを伝えることができるでしょう。
61-2 負担付遺贈
ところが、実際の葬儀を執り行うのは遺族です。遺族の人間関係や宗教観の違いなど、さまざまな感情のすれ違いによって、必ずしも故人の想いが遂げられるとは限りません。そのようなときには「負担付遺贈」を遺言に記しておくと想いを叶えることができます。
遺贈とは、遺言によって遺言財産の全部または一部を贈与することをいいますが、負担付遺贈とは、贈与をする人が贈与を受ける人に対して、財産をあげるその見返りとして、一定の義務を負担してもらうという決め事です。例えば、「残された妻の面倒を看ることを条件(負担)に、財産の○○をあげる」というような贈与です。
負担付遺贈を遺言で残しておけば、特定の人に葬儀の方法を伝え残し、金銭的な負担も含めて実行してもらうことが可能になります。
ただし、贈与を受ける側の人が負担を拒むことができないわけではありません。そこで、生前に負担付遺贈を行う人にその旨をしっかり伝えておくことが大切です。
61-3 遺言が見つかった時にやること
はじめに、「遺産整理に関する委任契約」を金融機関との間で締結します。その際には、遺族(相続人)の中で代表者を決め、金融機関との窓口となります。
次に、「相続財産の調査、財産目録の作成・報告」が行われます。金融機関は、遺族に代わって亡くなった人に関する相続財産や相続債務を調査し、財産目録を作成のうえ遺族に報告します。このとき、不動産の権利証や預貯金の通帳・証書、有価証券の現物・預かり証などの財産は、遺産分割手続きを行うための準備として金融機関に預けることになります。
相続財産の目録が作成されたら、「遺産分割協議書の作成」に移ります。財産目録をもとに、相続人全員で遺産分割の話し合いを行い、分割内容が決まれば、遺産分割協議書が作成されます。
遺産分割協議書が作成されたら、その内容に基づいて、不動産・預貯金・株式等の財産の名義変更や換金処分を実施して、遺産の引渡しなどの分割手続きが行われます。
以上の流れで、遺産整理が終了します。終了時には金融機関が遺族に対し、「遺産整理終了報告書」を提出します。